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2006/06/03

国家の品格

オンライン書店ビーケーワン:国家の品格売れているらしいのと知人からの勧めがあり、読んでみました。薄っぺらい本なのでおよそ3時間程度で読み終わり、何だかお金を損したような気になりました。こんな本だと知っていたら、BookOFFで出るのを待つか読まなくても良いくらいだったというのが感想です。

僕の知人で僕と少しでも深い話をしたことのある人なら、「これってきむらが馬鹿の一つ覚えみたいに、しつこく主張していた事と同じじゃん」と思うことでしょう。子供ができたあたりから、ほとんど同じような事をことあるごとに言いふらしていました。それを今でも覚えていてくれている人は何人もいないとは思いますが...もちろんこれほどの枝葉はないのですが、小説ではないのだから枝葉なんて内容の0.001%程度にしかならないと考えています。

普通に生活していれば、30歳前に気が付く事ばかりです。

では、なぜこんな本が売れるのかという事を考えてみます。購入者の感じるであろうことを思われることを3つ挙げてみます。

1. 荒廃していく日本を見て不安を抱える毎日を送っていて、その中で自分と同じ事をきちんと考えている人がいるのを嬉しく思って購入するのでしょうか。

2. それとも、何か似たような事を感じていたけど、その想いをきちんと現す事ができないでいて、この本でそれが明文化されているのに喜びを感じて購入するのでしょうか。

3. まさか、この本を読んで今の日本の状況、世界の状況、歴史を学び、これから自分がどのように生きるべきかの指針を得たと考えて購入するのでしょうか。

最初の理由は考えられません。色々と主張してはいますが、何か底の浅さを感じます。きっと、もっと他にも色々と考えられているのでしょうが、この本の厚さでは書ききれなかったものと思われます。また、文章がちょっと稚拙かなと感じられました。

次の理由は最もです。最近の世の中はどう考えても調和がとれていません。勉強はすれども目的は無く、教えられた道徳観を実践する場もなく、心に抱く想いを深く人と語り合うのも難しい。そんな中できちんと自分の主張を形にするのはとても難しいと思います。「何か間違っている」とか「こんな事をしていてはいずれ大変なことになる」と感じながらも、情報を操作しようとする見えない手により深く思考する事を邪魔されているからです。そういう人がこの本を読めば納得する事が多いと思われます。
しかし、そういう人はただ思考が足りないだけのような気がします。もっと自分の中にある想いに焦点を当て、磨き、心の鏡で社会を映し出せば自ずとこれに書いてあるようなことは見えてくるのだと思います。

最後の理由は一番恐ろしい。こんな気持ちで買っているという事は、本を読んでいないか、読んだとしても思考することのない人の証拠です。この本を読んで何か変わることができればいいのですが、そんな人はほとんどいないことでしょう。何か大きな想いを一瞬抱く事はあっても、あっという間に想いは風化し、忘れ去られて何も形にはならない。それは何故か。この本から学ぶことがあるということは、この本に書かれているような事に自分で気付くようなことをしていないということです。つまり、その人はこの本に書かれている学ばない民衆そのものだからです。

率直な感想として、小学生に教える内容に枝葉を付けて大人が何とか読めるような形に仕上げたという印象を受けます。著者は「何で大人に向けてこんな内容の本を書かなければならないのか」と思っていることでしょう。これはある意味、ものすごく危険な状態にあることの現れだとも言えます。一昼夜で変われるほど世界は容易ではなく、人もまた思ったからと言ってすぐに行動できるような生き物でもありません。そして、こんなことを本にしなくてはならないばかりか、それがベストセラーになるような世の中で次の世代を担う子供が育てられているのです。

最後の理由で購入した人は、この本を読んで共感を得て、色々とわかったような気になるかもしれませんがそれはまやかしです。そのような人達はこれからもっと学ばなくてはなりません。
まず歴史と哲学を学んで下さい、そして思考して下さい。そうすれば与えられた情報から真実と偽りを振り分けるプリズムが心に形成されることでしょう。

この本の購読を他の人に薦める人がいれば問うてみたい。あなたはこの本に書かれている内容に自分自身で気が付くためには、一体何をしなくてはいけないと思いますか?

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コメント

当たり前のことを当たり前にできない、本音と建前の二枚舌の屈折した大人の社会は、自動的に崩壊するに任せて、我々の世代は子供達にどのように本質を伝えていくのかが重要だと思います。

僕は子供がまだいないので、よそ様の子供と一緒に遊びながら少しずつですが伝えていこうと心がけています。意外と子供の方が本質をよく理解してます。

投稿: K2nd | 2006/06/05 12:36

K2ndさん、コメントありがとうございます。
子供は真っ白なので、どんな色にも簡単に染める事ができるような気がします。K2ndさんの想いがうまくその子達に伝わるといいですね。

ただ、子供を色々なところに連れて行くと、普段僕らがしてはいけないと教育していることを、子供にさせている親がとても多い事に驚かされます。世の中の矛盾に対し、「どうせいいかげんなんだ」と諦めさせるのではなく、「矛盾があるからこそ、しっかりと見極めなくてはならない」という意識を子供に養わせるべき大人にそんな意識が無いような気がしてなりません。

子育ては難しいです。前にもブログで書きましたが、本当に「子育て」は「親育て」ですよ。

投稿: きむらしのぶ | 2006/06/06 05:26

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